アルゼンチンで8月の大統領予備選でハビエル・ミレイ氏が最大の票を得たことが報じられている。
ミレイ氏はリバタリアニズムを信奉している過激な政治家だ。リバタリアニズムを日本語に訳せば自由至上主義となり、個人の自由を最大限にし、政府の存在を最小限にすべきという思想を表す。
ミレイ氏の公約している政策の中で一番の目玉は中央銀行の廃止と通貨のペソを排してドル化しようというものだ。この政策は国家の通貨管理政策の放棄することを意味しており、一見自由を追求するという目標とは反対に見える。なぜそのような主張をするのか?それは現在まで行われきたアルゼンチンの政治によって引き起こされた高すぎるインフレが関係している。
以下のグラフはアルゼンチンの年間インフレ率の推移であるが、ここ最近は100%を超えて急激に物価が上昇していることがわかる。アルゼンチンには豊富な天然資源があるにも関わらず、なぜこのような状況になったのか?

アルゼンチンの為替政策
アルゼンチンには厳しい資本規制があり、簡単に外貨を手に入れられないようになっている。そして複数の為替レートがあるようだ。公定レートに加えて、大豆輸出のための為替レート、観光客の為替レート、アーティストのコンサート用の為替レートなどでそれぞれ違う価格で外貨を取引するというものだ。このほかにもいろいろな為替レートが存在する。
このように様々な為替レートが存在すること自体が経済取引を複雑なものにして経済の活力を奪うことが想像される。問題はそれだけではなく、政府がアルゼンチンペソを過大評価していることだ。

アルゼンチンには政府の公定レート以外にブルードルと呼ばれる非公式の為替レートが存在する。ブルードルは政府の規制の外で自由に価格が決められるためこちらのレートのほうがより経済の実態に即した価格になっていると考えられる。
2023/09/25の非公式レートが1ドルに対し735/745ペソで公定レートが347/365ペソであるため、公定レートは自由市場よりもペソを2倍以上過大評価していることがわかる。これだけ過大評価されていると輸出企業の競争力にダメージを与え生産力を低下させるだろう。実際クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領が2011年から為替規制を導入してから貿易収支が赤字化していることが以下のグラフから確認できる。

物価が高騰しないようにするために為替管理政策を導入したのかもしれないがそれがかえって現在の高インフレをもたらす大きな要因になったのだと私は思う。資本規制によって外国の投資家は利益が得られないため海外からの投資が減少し、高すぎる公定レートによって国内の企業も輸出から大きな利益を得ることができない。為替規制を撤廃し、為替レートが自由に決められる状態にならなければいつまでも高インフレが続くだろう。
ただし為替レートの自由化はペソの下落により物価が大幅に上昇してしまうために政治的に実行するのが難しい。そうなれば政治的混乱が起こりまたもとに戻そうとする力が働く可能性が高い。
そこでミレイ氏はドル化することであえて政治家や官僚から為替政策を実行する権力を奪い取り通貨価値が安定化した状態を恒久化しようとしているのだろう。